御聖体
若い頃の話です。
僕は一時期、Fさんという女性からのアプローチを断ったことで周囲との関係が上手くいかず、一部の女性陣からシカトされていました。
Fさんは10歳近く年上で、ものすごく太っていました。
僕は太っている人は苦手だと言っても、聞く耳は持たず・・・・
しかも痩せる努力は一切する気は無いと公言していました。
しかもお父さんの面倒を見て欲しい・・・・とか。
シカトされた原因は申し出を断ったことだけでなく、無く、僕のある種の欠点や何かに対する不満が蓄積していたのかもしれません。
それに、こんなツマラナイ男が断るなんて・・・生意気だとまで言っていました。
ある看護師は「あんなに優しい人が、どうしてそんなに嫌がるの?」とまで言ってました。
そんな状況で仕事をするのはきつかったのですが、
何とかしごとを続けておりました。
Fさんからは、時折トゲトゲしい言葉を浴びせられ、おばさんたちからの中傷・・・
仲が良かった人の一部からもシカトされ・・・
僕は、気持ちを押し付けられている感覚と、
自分の選択の自由が徹底的に無視されているような・・・
存在が軽く見られているような・・・気持ちでした。
ぼくの冴えない物腰は、普段から彼女たちの軽蔑の格好の餌食でした。
イヤミに対して言い返せない弱さ、相手の気持ちを受け入れられない自分の後ろめたさもありました・・・
断った理由は相手の見た目もあり、何か後ろめたさもあり、かと言って
好きでない・・・自分に嘘はつけない・・・・
ぼくを中傷する人たちへの憤りと、無視されることの辛さ・・・
冬だったこともあり・・・・
四肢を突き刺すような空気の冷たさは身に鋭く突き刺さって心身も疲れていました。
そのような時でも教会のミサへの出席はなるべく欠かしませんでした。
平日でも時間の許されるときは教会の聖櫃の前に膝まずいてロザリオを祈っていました。
ある日曜日の夕ミサに出席しました。
19時のミサだったので、夕食は食べず聖体拝領の準備をしてミサに出席していました。
イエズス、マリア・・・
心の中で射禱を唱え、聖体拝領をした後に心臓が熱くなるのを感じました。
鼓動が激しくなり、胸が強く締め付けられ・・・息も上手くできず、苦しくて膝まずいているのがやっとなのです。
口で、どう説明したら良いかわからないのですが・・・・
胸の内で激しく燃える火を感じるというか・・・苦しいのですけれども、
心地よいのです。
今までの職場での事は些細な事のように思え・・・・
今までの彼女たちへの負の感情は消えていったのです。
ただ頭の中では「イエズス、イエズス・・・・はい、すべて赦します。
私の罪もお赦しください・・・はい、赦します、全て・・・・」
聖体拝領の後の事は良く覚えてなく・・・・そのまま跪いたままだったのかもしれません。
聖堂の電気が消え、人が皆出て行っていましたが・・・・
ぼくはポツンと取り残され・・・・
苦しい・・・このまま死ぬのかな・・・・
このまま一人で死んでも、それも良いかな・・・
思っていました。
一時間は、こんな状態が続いているように感じていました。
しかし、徐々に正気を取り戻した時・・・
時計を見るとミサが終わって多分10分くらいしか経っていなかったのです。
薄暗い聖堂の中は、ぼくの他に右斜め前でスータンを着たポーランド人の若い神父様が跪いて祈っていました。
ぼくはロザリオ1環祈り、聖堂を出て、帰路につきました。