薬味を作るんです。
隔離室でガンガンと、音を鳴らして看護師を呼ぶAさん。
あの日も「看護師さ〜ん」と絶叫してガンガンドアを叩いていた。
行って部屋を開けると、Aさんは言った。
「ここに・・埋蔵金・・・6億が埋まってるんです・・・あなたにあげます。」
また、ある時は、こう言っていた。
「薬味をお願いします。ネギ・・・あるでしょ。縦に刻んで、薬味を作るんです・・・」
さらに彼はこう言った。
「そば屋をやるんです。今のうちに用意するんです・・・店舗持ってます」
「ふーん・・・そうなの」
「握手・・・」Aさんは手を僕の方に伸ばした・・・
僕は彼の手を握りしめた。